中国の即席麺、スピード勝負、香港日清上場、戦略を聞く―日清食品HD社長安藤宏基氏、香港日清董事長兼CEO安藤清隆氏(2017/12/25)

日清食品HD社長 安藤宏基氏 中高価格、拡大のチャンス

香港日清董事長兼CEO 安藤清隆氏 日中ハイブリッド経営で

 日清食品ホールディングス(HD)が11日、中国・香港事業を統括する日清食品有限公司(香港日清)を香港市場に上場した。中国の即席麺市場は2013年をピークに縮小に転じている。縮みゆく市場にどう立ち向かうのか。安藤宏基・HD社長と、次男で香港日清の安藤清隆・董事長兼最高経営責任者(CEO)に上場の狙いと事業戦略を聞いた。

 ――中国事業の上場の狙いは何でしょう。

 安藤宏基氏「(中高価格帯の即席麺市場が)成長する中国で、即決即断で運営することが重要だ。中国のスピードは日本より速く、情報が日本に正しく届いていないことも多いと感じる。日本に持ち帰って判断していては、肌感覚がずれ、判断を間違うだろう」

 安藤清隆氏「今では尊重されるようになってきたが、中国ではモノ作りよりも、いかに商売するかに価値を置いている。コツコツと良いモノを作ることを重視する日本とは、解釈のずれは感じる。いまだに『パパママストア』が市場を支配し、日本とは1、2世代違う」

 ――上場で得た資金の使い道として提携やM&A(合併・買収)を挙げています。

 清隆氏「今後販売を強化したい中国の北、西部に営業・流通網を持つメーカーとの提携を考えている。東、南部では既に営業人員が1千人を超える。北、西部では相手のネットワークに日清の製品を乗せ、逆に東、南部では相手の商品を運ぶことが可能だ」

 ――2004年に業界3位の今麦郎食品と提携し、後に解消しました。

 清隆氏「今麦郎との提携で、中国での事業運営で多くのノウハウを学んだ。今麦郎は全国展開する大手で、1元(約17円)という低価格。(経営の方向性が違う)両社はメリットや利益を共有しづらかった。次は中小規模の企業と組む方が、メリットは出やすい」

 ――中国の即席麺市場全体は縮小しています。

 清隆氏「あくまでコモディティー(汎用品)の話だ。健康志向、安全性など新しい価値提案は必ず需要に合わせて成長していく。我々はマカロンのように、大きさではなく、味や色の良さといった価値がある商品を目指す」

 ――グローバル戦略は日清の長年の目標です。

 宏基氏「中国の総需要は最も多く、日本の約7倍に上る。人口も消費額も多く、若者向けの成長スピードは日本よりも速いと感じる。中高価格の即席麺も大きく伸びるタイミングに来た。上場で香港日清は経営の独立性が高くなり、その全責任は清隆董事長兼CEOで、ということだ」

 ――清隆氏のプレッシャーは大きいですね。

 宏基氏「いずれ、HD並みのPER(株価収益率)を出し、収益も時価総額も大きくしろよ、と。彼はそれなりの腹があって決めたのだから、やるだろう。子会社のPERが親会社より格段に悪いのでは、何のための上場か分からない」

 清隆氏「(苦笑いして)ちょっと時間をください。現地化を進め、日本の技術と中国のノウハウを落とし込んだハイブリッド経営で、必ず前に進んでいきます」

 宏基氏「技術に関しては、HDで海外子会社の運営をサポートする体制を整えている。香港日清の経営に独立性はあるが、親会社のサポートを受けられるのは大きな優位性になるだろう」

 ――「親心」ですね。

 宏基氏「まあこれは体制ですから、海外のどの子会社もすべてサポートします。当社は現在、米国、メキシコ、インドに外国人CEOが3人おり、ほとんど独立しているようなものだ。(清隆氏の名刺を見て)おまえもCEOという肩書が付いているのか。なら4人目にいれてやるか(笑)」