中国の即席麺、スピード勝負、香港日清上場、戦略を聞く―モノ売れぬ中国、味・高品質に脚光(2017/12/25)

 日清食品HDは1984年に香港に進出した。商店一軒一軒をカバーする自前の物流網を武器に販売を拡大。袋麺「出前一丁」は今や香港市民にとっては欠かせない「ソウルフード」となり、企業別シェアで約6割を握る圧倒的存在となった。

 香港進出の10年後に満を持して中国大陸に乗り込んだが、当時の中国は経済成長が緒に就いたばかり。日本並みの品質にこだわる日清の商品は高根の花だった。中国では1元(約17円)程度の袋麺が「手軽に腹を満たせる」として季節労働者や学生ら所得の低い層に支持され、日清の商品はなかなか売れなかった。

 だが経済成長の鈍化に加え、食用油の安全問題などを背景に中国市場の伸びが止まる。英調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、市場は2013年の933億元(約1兆6千億円)をピークに前年割れが続き、22年はピークの約8割になるとみる。

 一方で脚光を浴びたのが、「味」や「高品質」を打ち出した5~20元のカップ麺だ。所得水準の向上を背景に、日清も会社員などの若者層を中心に「高くてもより良いものを食べたい」という需要を取り込んだ。16年の日清の企業別シェアは2.8%の5位だが、中高価格帯では19.8%と、カンシーフ(37.9%)に次ぐ2位に上がる。この分野は伸びそうだ。

 変わりゆく中国は、モノが売れない日本の姿にだぶりつつある。日清は巧みなマーケティング戦略などで「カップヌードル」「どん兵衛」などのロングセラーを日本で生み出してきた。そのノウハウを中国市場にあわせてさらに落とし込めるかが勝負になる。