即席麺、「縮む中国」争奪、日清、香港上場で高級品攻勢、現地化進め、出資も視野(2017/12/12)

 日清食品ホールディングス(HD)が11日、中国子会社の株式を香港取引所に上場した。現法の独立性を高め、カップヌードルなど高価格帯商品で攻勢に出る。背景にあるのは世界最大の即席麺市場、中国の変化だ。3年連続で前年割れする一方、量から質へのシフトが急ピッチで進む。現地大手も対応を急いでおり、得意の高価格帯で縮む市場の争奪に動く。

 「日本に持ち帰って判断していては、中国市場の変化のスピードに追いつけない」。11日、日本経済新聞の取材に応じた日清HD社長の安藤宏基氏は、日清食品有限公司(香港日清)の株式上場の狙いをこう述べた。

 日清が海外子会社を現地の株式市場に上場するのは初めてだ。今回は市場から9億5千万香港ドル(約140億円)を調達し、うち45%を工場の新増設に、30%を現地企業への出資などに使う方針。現地化を徹底して意思決定の迅速化を図る。宏基氏の次男で香港日清董事長兼最高経営責任者の安藤清隆氏は「日本人のモノ作り、中国人の商売のうまさという両者の強みを結びつけ、今後の成長につなげたい」と強調した。

 同社がここでアクセルを踏むのは中国の即席麺が大きく変わりつつあるためだ。2000年代までは1元(約17円)程度の袋麺が「熱湯を注ぐだけで手軽に腹を満たせる」と季節労働者や学生ら所得の低い層の支持を集めた。当時は現地大手の康師傅控股(カンシーフ)などが席巻し、価格が高い日清の商品はそれほど売れなかった。

 経済成長の鈍化や健康志向の高まりとともに状況が変わってきた。世界ラーメン協会によると、中国の即席麺市場は今も世界のほぼ4割を占める巨大市場だが、13年をピークに減少が続く。縮む市場で脚光を浴びるようになったのが「味」や「高品質」を打ち出した高級カップ麺だ。

 所得水準向上とともに、若い会社員などを中心に「高くても良いものを食べたい」という需要が膨らみつつあるのが今の中国。即席麺は「労働者の食べ物」から「仕事や勉強の合間に小腹を満たす軽食」になった。割高とされた日清の「合味道(カップヌードル)」もシェアが上昇。同社によると16年の中国シェアは3%で5位だが、5元以上の価格帯に限れば20%とカンシーフ(38%)に次ぐ2位につける。

 最近は現地大手も高価格帯に力を入れ始め、カンシーフは辛みを強調した「黒白胡椒」などがヒット。業界2位の統一企業も高級カップ麺「湯達人」などの品ぞろえを増やしている。日清には「中国の高級麺市場をつくった」(清隆氏)との自負もあり、現法の上場で足場固めを急ぐ。低カロリーのカップ麺など、より付加価値の高い商品を投入して市場を攻略する構えだ。

 ただ口が肥えた消費者を納得させるのは機能よりもむしろ味。16年には630万人を超す中国人が日本を訪れ、日本のラーメンのファンも増えている。現地化で中国の消費者の好みを探るだけでなく、故・安藤百福氏が発明した「チキンラーメン」から進化を続ける日本の味で勝負することも必要かもしれない。